55)ロータス・エランS1/Lotus Elan S1
*LOTUS CLASSIC*
■ ロータス・エランS1/Lotus Elan S1
現代でもスポーツカー・ブランドとして人気の高いロータス。いまなお高い注目を集めているロータスの「古典」というべきが、タイプ26、ロータス・エランのシリーズ1ことS1である。単純に性能だけで較べたらのちのたとえばエラン・スプリントなどの方が、エンジン・パワーをはじめとして進化している。だがしかし、趣味という価値観でみると、そのモデルのオリジンには企画者の思いがよりダイレクトに詰まっていて、興味深かったりするのだ。
さて、エランS1は浮いたり沈んだりを繰り返していたロータス社が、二度目の浮上を目してつくり出した渾身の作。つまり、ロータス・セヴンで成功しロータス社を立ち上げるも、当時の新素材FRPを使ったエリートの生産性の悪さで倒産の危機にまで瀕していた1960年代はじめ、ふたたびのヒット作となったのがエランだった。
ところで、エランをして英国スポーツカーの典型、代表のようにいわれたりするが、それは少しちがう。ロータスはことさら個性的であるコトを重んじる傾向にあり、むしろ英国スポーツカーの異端といってもいいほどだ。先のFRPモノコックの経験から、エランには鋼板を組んだバックボーン・フレームがつくられた。それは独創的な形で、前方にエンジンを抱え込み、後方はデフを吊り、四隅にサスペンションを受ける。それにFRP製のボディを被せるわけで、ストレスのほとんどシャシーが受けることからボディの自由度は大きい。初期のS1はオープン・ボディで、サイド・ウィンドウはサッシレスの釣り合い式。助手席側のグローヴボックスが独立していることや小さな2対のテールランプ、キャップ付のホイールなどが特徴。
フォード116E型をDOHCにチューンニングしたエンジンは、この軽量ボディにとっては圧倒的で、「ライトウェイト・スポーツカー」のお手本のような走りを提供してくれる。それに、オリジンであるというプライドを携えて、エランS1は濃密な趣味生活のアイテムになるのだ。