66)メルセデス・ベンツ300SL「ガルウイング」/Mercedes Benz 300SL 'Gull-wing'

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MERCEDES-BENZ CLASSIC

メルセデス・ベンツ300SL「ガルウイング」/Mercedes Benz 300SL 'Gull-wing'


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 1954年に発表されたメルセデス・ベンツ300SLをして「紀元前のスーパーカー」と形容することがある。たしかにテューブラー・スペース・フレームや燃料噴射式を採用したエンジン、それに並外れた高性能であることなど、ランボルギーニ・ミウラのミドシップほどではないにせよ、おおいに画期的でスーパーな存在である。なによりも上方に大きく翼を広げるような「ガルウイング」ドアはメルセデス300SLをして、別世界ののりものというイメージを起こさせる。

 さて、その「ガルウイング」ドア下部のレヴァを引き出してロックを解除、上方に開いて乗込む。乗降のさまたげを少しでもなくすよう、ステアリング・ホイールは跳ね上げられるようになっている。それでも、高い敷居をよいしょと跨いで、遥かに低い位置のシートに腰を沈める。普通のドアではほとんど乗り降り不可能、ガルウイングは不可欠の装備ということが即座に理解できる。乗込んだメルセデス300SLのコクピットは、クラシカルな佇まいのなかにも、深紅の革とボディカラーとクロームのモールなどで彩られた素晴しい空間である。


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 もともとはレース目的で開発されたメルセデス300SLだが、市販化に際して、それこそ当時世界一といっていいスペックがちりばめられている。それは、上質に仕上げられた装備類についてもいえることで、まさしくスーパーカーの印象であった。コースをなん周かさせてもらったが、クラシックな印象のなかにも、当時の超高性能クーペの片鱗が感じ取れた。エアコンもない時代、窓の空かないコクピットは、走る季節を選ぶんだろうなあ、などと思いつつ。

 1952年のレースで勝利したワークスカーの活躍から、これを是非市販モデルとしてつくって欲しい、とダイムラー・ベンツ社に働きかけたのは、米国で輸入ディーラーを経営していたマックス・ホフマン。彼はポルシェの「スピードスター」などの企画者としても知られるが、このスーパー・スポーツを1000台売ってみせると説得。実際に市販されたメルセデス300SLは1400台のヒットをみるのだから、当時のミリオネアもスーパーカーを待望していた、ということか。


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