85)ポルシェ904カレラGTS/Porsche 904 carrera GTS

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*PORSCHE CLASSIC*

ポルシェ904カレラGTS/Porsche 904 carrera GTS


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 ポルシェは長くふたつのモデルしかつくってこなかった。つまり、戦後間もなくに発祥の地であるオーストリアの山村、グミュンドでポルシェ356第一号車をつくり出して以来、四半世紀以上にわたって基本的にはポルシェ356、ポルシェ911という空冷水平対向エンジンをリアに搭載した「速い小型車」、ふたつのモデルラインをつくりつづけてきた。

 もちろん、スパイダーなどレースを主目的にしたいくつかの派生モデルや、VWポルシェとしてつくったポルシェ914などは存在するのだが、ポルシェといえば丸くてお尻の少し重たそうなスタイルに帰着してしまうようだ。だからこそ、というわけでもないのだが、ポルシェ356時代の最後に登場してきたポルシェ904カレラGTSが忘れられない。「絵に描いたような」という形容があるけれど、ポルシェ904カレラGTSはまさしくそんなスタイリングだ。ポルシェ356の高性能版に「カレラ2」というのがある。通常1.6Lエンジンだったところに排気量を2.0Lにアップし、OHVヴァルヴ・システムを一気にDOHC、つまりは4カムに進化させて180PSにまでチューニングアップした587/3型エンジンを持つ。ポルシェ904カレラGTSは、その「カレラ2」エンジンをミドシップ搭載、FRPの流麗なボディを被せた。


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 剛性を保つためにサイドのシルは恐ろしく深い。それを大股で乗り越えてコクピットに収まると、まさしくそこは閉鎖空間。とくにリア・クウォータ部分のマスは大きく、リアのエンジンルームとの隔壁にあけられた小さなリア・ウィンドウだけが後方の視界になる。DOHCカムシャフトを駆動するためにベヴェルギアを用いたエンジンのミュージックはけたたましいというようなものではない。轟音に包み込まれて走る、その美しいボディからは想像もできないほどの格闘の場になる。

 ポルシェ904カレラGTSというと、第二回日本グランプリのために持ち込まれたシルヴァの1台が有名だったが、その後、黒や赤を見るにつけ、シャンパン・イエロウに塗ったら似合いそう、などと夢想したりしている。