88)ポルシェ・ケイマン/Porsche Cayman
*PORSCHE MODERN*
■ ポルシェ・ケイマン/Porsche Cayman
ドイツものは最新のモデルが一番、つねづねそういわれてきた。年々高性能に安全になっていくドイツ車をみていると、ひとつにそれは当たっているけれど、趣味人たるもの、そのなかからのちのちまで残るようなモデルを見極めたくなる。
イノウエが最近のポルシェのなかで、個人的に注目しているのはポルシェ・ケイマン。2005年に、ポルシェ・ボクスターのクーペ版のような触込みでケイマンが登場したとき、イノウエは即座にあるモデルを連想して、ちょっと欲しくなっていたりしたのだった。その連想の下敷きになったのは、なんとアルピーヌ。それも、洗練されたA110ではなく、初期の「ミッレ・ミリア」モデルあたりを思い起こさせてくれたのだ。ボンネット上にフォグランプを付けて、フレンチ・ブルウに塗り直して……というのはちょっと悪のりが過ぎるというものだが、ルーフからリアにかけてのボディラインは、いままでのポルシェにはなかった色っぽさがある。
スタイリングに見とれてのケイマンだから、ベイシックで充分。もちろん、初代ケイマンたる987系(考えたらボクスターのクーペ版という意味で987C型という)がいい。走りにまったく不足はないし、所有して手に余ることもないだろう。いつの間にか現実性を以って真剣に考えていたりするからおそろしい。
ポルシェというブランドをことさら意識することなく、一級の性能と趣味性をこれ一台で満たしてしまう。もちろん、ポルシェの本流はポルシェ911という気持ちはありながら、いや、そういう気持ちが強いからこそのケイマン、という選択。